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デジタルテクノロジーと「対話」|AIでカラーになった1枚の写真からつながる物語

過去と現在、人と人が1枚の写真の上で出会う

最近のニュースで目にとまったもの。東京大学大学院 渡邉 英徳教授と同大学生の庭田杏珠さんが進める「記憶の解凍」プロジェクトから生まれた書籍「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」(光文社新書)に掲載された1枚の写真から、そこに写った人物が名乗り出て特定されたというニュース。

 被爆翌年撮影の恋人は「私と妻」ー広島の男性、写真出版で名乗り
https://www.47news.jp/5336949.html

原爆投下の翌年に広島市のデパート屋上から焼け野原を見つめるカップルを捉えた白黒写真。米国の大学で日本人研究者が約4年前に発見して以降、2人が誰なのかは謎だったが、人工知能(AI)でカラー化した写真集の出版がきっかけで同市南区の元カキ養殖業川上清さん(90)が「写っているのは私と後に結婚した妻」と名乗り出た。

写真は2018年の広島原爆の日にツイッターに投稿され、被害のすさまじさと若い男女の姿の対比が話題に。男性は「亡き妻との思い出がよみがえった」と喜んでいる。

2020.10.5付 共同通信社

「記憶の解凍プロジェクト」からつながる物語

モノクロ写真がAIでカラー化されて、息を吹き返すように訴えてきます。同プロジェクトの興味深いところは、カラー化するのがゴールではなくて、その写真から生み出される「対話」とその情報の蓄積。呼び覚まされた記憶が1枚の写真に重層的な情報を加えていくプロセスです。1枚の写真が人々のコミュニケーションのきっかけになる、過去の出来事が今とつながる、AIというテクノロジーと平和活動に参加する高校生の出会いがこのプロジェクトを走らせる…一つ一つのエピソードが進化する技術と人間の関係性に希望と期待を持たせてくれます。同プロジェクトについてはこちらの記事でもわかりやすく紹介されています。
物語は続きます。壊れた街とそこにいる若いカップル、カラー化されるだけでも戦争の爪痕の中から前に進んでいく時代を生き生きと感じられる1枚です。さらに、その登場人物が名もなき人から「川上さん」になり、若い2人がその後結婚して、家庭を作り、令和の時代まで共に生きた物語が写真に加わることで、まるで映画のはじまりのワンシーンのようになります。(川上さんの笑顔も素敵です。)経緯はTVでも紹介されました。詳しくはこちら(放送された映像もあり)。

渡邊教授と庭田さんの出会い、記憶の解凍プロジェクトの中での1枚1枚を語る人々との対話、写真集を出版しようと勧めた出版人、写真集を川上さんに見せた知人の方、名乗り出た川上さん…こうした出会いのうち一つでも欠けたら、このニュースはなかったし、焼け野原を見つめる2人のその後の物語を誰も知ることはありませんでした。人間同士の働きかけ、出会い、つながりをテクノロジーがより深く、広くすることができる実例を見せてもらえたような気持ちになります。

デジタルアーカイブとコミュニケーション

ミュージアムをはじめ、世の中にはたくさんのデジタルアーカイブ資料があるけれど、それを生きたものに変えるのはやはり人間のコミュニケーション。振り返って、ミュージアムを考えると、コミュニケーションを生み出すのは何か、デジタルツールでつながれるようになったことをいかにポジティブに活かすか、アーカイブをアーカイブにとどめないテクノロジーの活用法は?といろいろアイデアと可能性が広がります。

地域の住民とよりフレキシブルにつながってもいい、離れた地方のテーマ共有できる施設と協働してもいい、世界のミュージアムと共同ウェビナーをやってもいい。デジタルなら今まで難しかった時間や距離を超えることができます。ミュージアムのデジタルコミュニケーション自体をプロジェクト化して、高校生や大学生との協働プロジェクトにしてもいいかもしれません。

デジタルとリアルの垣根はますます低くなって、それを分けて考えるのも馬鹿馬鹿しい時代になっていくでしょう。それを考えたり、迷ったりした時キーワードになるのは「コミュニケーション」なのではないかと思うのです。モノの時代からコミュニケーションの時代へ、今を生きている人間はみな試行錯誤しながら前に進むしかありません。次々出てくるテクノロジーの産物にもてあそばれているような気持ちになることだってあるはずです。でも新しいことを学ぶこと、試してみることを恐れず、それを楽しむことで、予想外の面白い未来が見られるかも!と期待しています。

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