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ゲリラ!ゲリラ!ゲリラ! | スモールミュージアムのマーケティング

ゲリラ・マーケティングという言葉の甘美な響き

“人もお金も足りない、この状況で何ができるって?”

“いいかい、こんな手駒で戦おうというのは無謀、いや愚かというものさ。”

“大人になれよ。とりあえずはちょっと強めの酒でもちょっと飲んで、今日は大人しくベッドに入るんだな。朝になりゃ、とびっきりの美女に目覚めのキスされるくらいのラッキーがあるか、頭が冷えてるかさ。”

“いや、オレは自己満足で当たって砕けるつもりはないぜ。それが10%の勝率だったとしてもな。やるのは勝つためだろ。”

で、一見奇抜な方法で見事難局を乗り越えて、成功を手にする主人公とチーム(アメリカTVドラマ風)。

なんてことが起こるか、起こせるか!?

予算がない、人がいない、ツールもない、スキルもない、ないない尽くしでマーケ不足、なんか作れ、広報しろと言われてませんか?でも、明らかにビハインドからでも白旗は出すまい。明らかな戦力差に挑む方法だってあるはずです。ゲリラです。たぎりませんか?ゲリラっていう響き。

ゲリラ・マーケティングとは1984年にジェイ・コンラッド・レビンソンが著した” Guerrilla Marketing ” で定義された、主に低コストのマーケティング戦略を指します。

“achieving conventional goals, such as profits and joy, with unconventional methods, such as investing energy instead of money.”

(利益や喜びなどのこれまで通りの目標を、お金の代わりに労力をかけるといった従来にない方法で達成すること)

ジェイ・コンラッド・ロビンソン

必要なのはお金ではなく、時間と創意工夫とアイデア。隗より始めよ、です。型にとらわれず、トライ&エラーを厭わず、失敗をしてもへこまず、諦めず学んで挑戦し続けることで得られるものがあります。

では小さなミュージアムでも始められるマーケティングのヒントを探してみましょう。

ミュージアム・マーケティングのゴールはより多くの来館者を獲得すること

ミュージアムのマーケティングでゴールとするのは、言うまでもなく来館者を増やすことです。充実した収蔵品も、いい展示も、多くの人に見てもらい、体験してもらい、いいものだったと感じてもらうことで社会に意義を還元し、価値を示すことができるからです。

まずはミュージアムの来館者特性を分析し、その“市場”を把握することから始めます。既にミュージアム のサポーター、ファン(既存顧客)へアプローチを強化して、安定的な来館者数に結びつけることも大切ですが、今回は新たな来館者(新規顧客)の獲得に注目していきます。

来館する可能性の高いのは誰か

物理的距離、興味関心の度合いによって想定される来館者の属性を分類してみます。

1. 近くに住んでいて、ミュージアムのテーマや活動に関心が高い層
  • 学校団体
  • 文化への感度の高い個人
  • 地域団体
2. 近くに住んでいて、さほどミュージアムのテーマや活動に関心がない層
  • 企業・団体
  • ファミリー
  • 勤め人
3. 遠方に住んでいて、ミュージアムのテーマや活動に関心のある層
  • 国内観光客
  • 外国人観光客(インバウンド)
  • オタク層 (聖地巡礼や歴オタ、城好きなど)
4. 遠方に住んでいて、ミュージアムのテーマや活動に関心がない層

 

1はおそらく現状でもミュージアムに来て、観覧ないしは参画しているファンと思われます。いわゆる既存顧客です。4は来館につなげる動機付けをするのにだいぶエネルギーが必要な無関心層といえます。

2と3の層が新たな来館者としてターゲットと考えられます。どうアプローチすることが効果的か、どうやって訴求するといいか、ターゲットごとにアイデアを考えていきましょう。

大きな一つのキャンペーンで特性の異なる層をまとめて対象にするのではなく、小さくてもきめ細かくターゲットごとに訴求できる複数のキャンペーンを立ててみましょう。

誰にアプローチするべきか、どんなキャンペーンが効果的か、考えることに時間を使いましょう。できれば、年齢・性別・所属する地域など、属性が異なる複数の人間で、アイデアをたくさん出し合ってみることをおすすめします。一人で考えても広がりに限界があります。まとまりに欠けても、アイデアは数多くあることで様々な展開が考えられるからです。

SNSは強い味方。その使い方と効果、分析方法を知る

SNSはいうまでもなくつながりを作るにはとても便利なツールです。ただ情報発信のためだけに使うのはもったいない。相互作用が生まれるような使い方を試みてみましょう。現在多くの人はたいていスマホを持っていて、写真や動画で自分の体験をシェアすることに慣れています。Facebook、Twitter、Instagram、LINEなどでミュージアムでの体験を共有できるオンライン上のスペースを作っておくのもいいでしょう。特定のハッシュタグやタグ付けでそこに来館者の投稿を紐づけられるようにしておくのもいいでしょう。

一例ですが、秋田県ー青森県を結んで日本海の海岸沿いを走る五能線ではInstagramを使った、キャンペーンを紹介します。ハッシュタグを指定して、撮影した五能線とその沿線の写真を投稿するだけというお手軽さ。これなら電車で移動中にもできてしまいます。もしかしたら特産品が当たったりして…というちょっとした期待も。

<五能線の旅インスタグラムキャンペーン>

乗車した人が指定のハッシュタグを付けて投稿すると参加できる五能線のキャンペーン

似たようなパターンで、写真撮影OKの展示物があるなら、ハッシュタグを指定して、好きな展示ランキングを写真の投稿数+いいね数で作るなんていうのもできるかもしれません。

Twitterの質問箱で、もしも来館したら…の想定で、展示の改善案を聞いてみる、とか。

来館者に呼びかけて、ミュージアムの公式LINEスタンプを公募イラストで作る、なんていうのもいいかもしれません。

オンラインでのキャンペーンは、近隣に住んでいない人でも参加でき、つながるコミュニティ作りに向いています。離れた土地からの来館者ともつながりが持てる、キャンペーンを英語や中国語など、日本語以外の言葉でもアクセスできるようにすれば、観光客でも参加ができる、そんなゆるい双方向性のある小さなキャンペーンをやってみるのもいいでしょう。反応を見ながらターゲットへの確度を上げていくには、画像や文言などを少しずつ変えてA/Bテストしていくことが有効です。こうしたキャンペーンのアクセス分析は、どこにどんな潜在的来館者がいるかを知るためのデータにもなります。

既存のオフラインキャンペーン、イベントの見直し

企画展のチラシというのは、よく見られるオンラインキャンペーンの方法です。オフラインキャンペーンは、実際に足を運べる距離に住む人で構成されたコミュニティに対してアピールしやすい方法です。

チラシを作ったら、これまで通りの配布場所にこだわらず、どこに置いたらより多くの人の目に触れるか、洗い出してみましょう。

地域自治体の広報誌でお知らせする、近隣の図書館や役所、ミュージアムにおいてもらうだけでなく、旅行関連の媒体に送付してみる、地域のインフルエンサーにお知らせしてみるなど、既存のつながり以外に何かできることはないか、一旦これまでのやり方を疑ってみることも有効です。

チラシに載せたコンテンツはチラシだけに留めず、WebやSNSのコンテンツとしても活用できるようにしましょう。紙媒体のデザインと制作を外部のデザイン会社に依頼するなら、一緒にHPやSNS用のバナーなど、オンラインで使えるアイテムを制作物の一つとしておくといいです。デザインが統一されることでキャンペーンの統一感ができます。

また、研究発表や教養講座など、実際足を運ばないといけないイベントも、オンライン配信してみるなど、イベントそのものをオフラインで終わらせず、オンラインで展開できないか、検討してみましょう。

セミナーや講座をオンライン化するには、

  1. 実際の講義をライブ、またはオンラインで配信する。
  2. 配信のみのウェブセミナーを開催する。
  3. 1と2を同時配信

と、いくつかパターンが考えられます。

1の例としては、下記の九州大学のセミナーのように、実際の講義を撮影してアップする(もしくはライブ配信してしまう)方法があります。

2は、スライドを画面上でシェアしながら、スピーカーが話すオンラインのみのセミナーです。例えば、アメリカ・マーケティング協会のセミナーなんかがこのタイプです。これだと、完全オンラインなので、スピーカーが別々の場所にいても、掛け合いができ、話に広がりが出ます。チャット機能や通話機能でリスナーからの質問にその場で答えることもできます。

3は1と2の合わせ技ですが、IT技術の進歩のおかげで、かなり便利になったので、無料ツールでも結構いけるはずです。

もちろん、有料のウェビナーツールを使えば、視聴者を集めるところから、終了後のフォローアップまで自動でできたりするので、さらに便利にはなります。

<参考>ウェビナーとは?ウェビナー開催のメリットとお役立ちツールまとめ

ウェビナーとは?ウェビナー開催のメリットとお役立ちツールまとめ

 

動画のいいところは撮っておけば、コンテンツとして蓄積していくことです。ライブで配信したセミナー動画に、日本語字幕をつけて聴覚に障害があったり、耳が遠くなったりした人にもアクセス可能なユニバーサル対応にしたり、英語や中国語字幕をつけてグローバル対応にしたりもできます。

YouTubeの場合、日本語の話者なら日本語の字幕は自動生成できます。日本語→英語字幕も可能ですが、そのまま使えるかはまだ要確認レベル。

YouTubeの使い方 字幕表示と字幕の自動翻訳

ただ音声テキスト変換技術は結構な精度になっています。日本語の話者の話のテキスト化の手間もだいぶ減りそうです。

言い間違いも直してくれるGoogleの「音声文字変換」、かなり使える(IT Media)

なので翻訳する場合は、一旦自動生成した日本語ファイルを別途翻訳して、英語字幕ファイルとして再アップロードした方がいいかもしれませんね。

Youtube Videoの自動生成(英語)字幕をGoogle翻訳とGoogleドキュメントの翻訳機能で比較する

ITが発達して、ネットもスマホも大多数の普通の人が使う時代になって、ゲリラ・マーケティングでできることがとても多くなりました。どんどん使える武器は増えていくに違いありません。

何を使って、何ができるのか、日進月歩の情報を追いかけていくのは大変ですが、なんだかワクワクもします。これまでお金ないし…と諦めていたものが手に届くようになったわけですから。

小さくても、予算も人もなくても、ゲリラになって、時間と創意工夫とアイデアで勝負しませんか?

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